風景の美は「発見」されるものだ。
そこにただ在るものではない。
それは見る者の想像力や感受性に依存し現象する光景。
つまり「思いを馳せる」時に立ち現れる景観にちがいない。
風景の「景」は、「日の光と影」を語意に持ち、
目に見えるものを意味する。
いっぽう「風」は、目に見えない経験を意味する。
自然の風景に出会ったときに感じる荒々しさや崇高さ、
古の建造物を目の当たりにした荘厳な美…。
目に見えるものを撮る風景写真は、
現在という瞬間を超えて過去や未来を指し示し、
風土に培われた歴史や文化にカタチを与えていく。

馬場 伸彦氏　
甲南女子大学文学部教授
専門/メディア文化論、写真論、日本近代文学論